ANALYSIS SERVICE
分析サービス
THERMAL CONDUCTIVITY MEASUREMENT
熱伝導率とは熱エネルギーの伝わりやすさを表す物性値です。
単位はW/(m・K)で表され、厚さ1mの板の両端の温度差が1℃である時、その板の1㎡を通して1秒間に流れる熱量を示します。
一般的に金属は熱伝導率が大きく、樹脂やゴム等は熱伝導率が小さいです。
熱伝導率は材料固有の特性であり、安定した熱伝達量を特性づけるのに利用されます。
熱拡散率・熱伝導率測定に関する主な規格を示します。
ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法 |
金属のレーザーフラッシュ法による熱拡散率の測定方法 |
Standar Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method |
熱伝導率測定原理には、加熱の時間変化の仕方の違いにより定常法と非定常法に分類されます。測定方法によって、材料の形状や熱伝導率の大きさなどの適用できる範囲が異なります。
非定常法の一つであるフラッシュ法では熱拡散率が測定されることが多く、神戸工業試験場でもフラッシュ法を採用しています。熱伝導率を知るためには、同じ温度範囲内での比熱容量と密度(あるいは室温密度)の値が必要となります。
具体的には、平行面を持つ試料の片面を短いエネルギーパルスで加熱し、試料の反対面の温度変化を赤外線検出器で測定します。解析モデルが複数ありますが、神戸工業試験場ではハーフタイム法(t1/2、信号高さが半分になるまでの経過時間)とカーブフィッティング法を用いて試料厚み(d)を使って、熱拡散率αを測定し、最終的には次式によって熱伝導率を計算します。さらに、フラッシュ法では比熱容量の測定も可能であり、比熱容量(Cp)については、信号高さ(ΔTmax)を参照試料の信号高さと比較することにより解析することができます。
λ=α×Cp×ρ
ここで、λ:熱伝導率 (W/(m・K))
α:熱拡散率 (㎡/sec)
Cp:比熱容量 (J/(kg・K))
ρ:密度 (kg/㎥)
レーザーフラッシュ法による熱拡散率の測定原理
近年、自動車業界やスマートフォンやノートパソコンなど電子機器や材料を製造・開発する業界では、半導体や電池などの電子機器やデバイスの高性能化や小型軽量化が進んでいます。限られた面積に高密度で実装されるため、機器の発熱による熱劣化・故障などのトラブルが問題となっており、事故を未然に防ぐためにも部品や材料の熱物性を正確に把握することが重要です。さらに、製造・開発現場では、機器の放熱特性の向上や新たな放熱性に優れた材料の開発が課題となっています。フラッシュ法は材料の放熱特性のうち特に重要とされる熱伝導率の測定を簡便に行える手法であることから、放熱材料の評価技術として広く利用されています。
熱伝導率の測定方法には定常法と非定常法に大別できます。
定常法は、測定対象の両側をそれぞれ異なる一定の温度に保持し、定常的な熱勾配を発生させて熱伝導率を測定する方法です。一方、非定常法は測定対象の片側に熱エネルギーを与えて応答時間を測定することで熱伝導率を算出する方法です。非定常法には過渡的熱流法と周期的加熱法があります。過渡的熱流法は急激な温度変化を与え、応答時間の変化から熱拡散率を測定しますが、周期的加熱法は周期的な温度変化を与え、位相のずれや減衰率から熱拡散率を測定します。
定常法と非定常法の主要な測定方法を下記の表に示します。
神戸工業試験場ではフラッシュ法を用いた熱伝導率評価を行っています。
定常法の一つである熱流計法のように、試料の一方向へ大きさが既知の熱流を与えて定常的な温度勾配が生じた状態において、熱流の方向に沿った試料の2点間の距離と温度差を測定することで熱伝導率を得る方法です。例えば、試料の片側を高温、反対側を低温に保持して定常的な熱の流れを発生させることで試料間の温度差を測定し熱伝導率を算出します。定常状態で直接、熱伝導率を測定することができますが、比較的大きな試料が必要になることや、試料に熱流を与えてから定常状態になるまで時間を要するため、長時間測定となる場合が多いです。また、試料表面の温度調節や周囲への放熱などが誤差の原因になります。
◆ 測定対象:断熱材等建材などの低熱伝導率材料
非定常法では、試料温度の時間変化を計測することで熱伝導率を算出する方法です。例えば、測定対象の表面にエネルギーを与え、時間変化による試料の温度変化を測定し熱伝導率を算出します。
パルス加熱法、周期加熱法、ステップ加熱法等様々な手法がありますが、フラッシュ法が最も普及しています。
フラッシュ法では定常法に比べて試料サイズが小さく迅速に測定が可能です。また広範囲の熱拡散率の測定が可能で精度・再現性に優れるという利点があります。ただし、熱伝導率の算出には比熱容量と密度が必要で、間接的に熱伝導率を評価する手法です。
◆ 測定対象:金属、セラミックス、高分子
非定常法の一つで試料表面に均一、かつ瞬間的なレーザーパルスを照射し、加熱された試料表面から試料裏面への熱拡散現象を観測して熱拡散率を求める方法です。赤外線検出器を用いて検出するため、非接触かつ短時間で熱拡散率を得ることが可能ですが熱伝導率を知るためには同じ温度範囲での比熱容量、密度(あるいは室温密度)の値が必要となります。また熱伝導率が小さすぎるものは検出が難しいのが欠点です。レーザーフラッシュ法は、一般的に、定常法である保護熱板法や熱流計法に比べてはるかに短時間での測定が可能です。
神戸工業試験場では様々な材質で熱伝導率測定の実績があります。
SUS、アルミ合金、銅合金などの金属材料や、近年需要が高まってきている複合材の測定も行っています。
その他、セラミックスや樹脂材料、薄膜材料など、ご相談頂ければ測定方法を提案させて頂きます。
NETZSCH製 LFA467HT Hyper Flash
装置形式 | NETZSCH製 LFA467HT Hyper Flash |
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仕様 | ・キセノン光源(パルス幅20~1200μs可変) ・RT~1250℃ ・50℃/min ・アルゴンガスフローによる測定 |
解析モデル | カーブフィッティング法 |
精度 | ・熱拡散率 ±3%~±5% ・比熱 ±5%~±7% |
試料寸法 | ・10mm orφ12.7mm or 10mm角 × t1~2mm ・その他形状は別途ご相談 |
熱拡散率の測定精度(±3%以下を実現)
Cu薄膜の測定厚さ0.25mmも測定可 (パルス幅20μs)
アルバック理工株式会社製 TC-9000特型
装置形式 | アルバック理工株式会社製 TC-9000特型 |
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仕様 | ・レーザー光源 ・RT~1400℃(常用1300℃) ・真空中による測定(1×10^-2Pa以下) |
解析モデル | ハーフタイム法 |
精度 | ・熱拡散率 ±3%~±5% ・比熱 ±5%~±7% |
試料寸法 | φ10mm × t1~3mm |
フラッシュ法は熱拡散率(熱伝導率)の評価方法として信頼性が高く、普及している評価方法です。神戸工業試験場では、バルク材から薄膜試料までお客様のニーズにあわせて様々な材料の熱伝導率測定を受託しています。特に、当社で保有しているキセノンフラッシュ装置は、最小パルス幅20µsecを達成し、従来では測定が困難であった高熱伝導率・薄膜試料の測定も可能です。試験片の作製・加工から測定までを当社で一貫して実施することでスピーディーにご要望にお応えし、信頼性の高いデータをお客様にご提供することができます。
フラッシュ法は定常法に比べて試料寸法が小さく、広範囲の熱拡散率(熱伝導率)測定が可能で、精度・再現性に優れるという特徴を有しています。また、材料の導電性に関係なく、金属、半導体、セラミックス、プラスチック、高分子材料など材質を問わず、幅広い種類の材料の熱拡散率・熱伝導率測定ができるという利点も持っています。熱伝導率の低い材料では、断熱性、保温性の評価ができる一方で、熱伝導率の高い材料では機器やデバイスにおける放熱特性の評価などができます。熱伝導率測定は熱物性評価においてとても重要なパラメータであり、研究開発、品質管理等にお役立ちいただけます。
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研究開発をサポートする、化学分析や物性測定などの分析・計測サービスのご紹介です。