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  • イオン付着イオン化(IA)法

    右図はIA法の原理図として提唱されているものです.IA法は非常にソフトなイオン化法の一つであり,少なからずフラグメンテーションが起こるCI法やFI法等のソフトイオン化法と区別するため,"フラグメントレスイオン化法"の用語が提唱されています.IA/MS法のルーツは1970年代に遡りますが,実用的な技術としての確立が進んだのは1990~2000年頃に元・国立環境研究所の藤井を中心とする国内の研究開発によります.2000年頃には一般分析装置も製品化されましたが,その後に途絶し,過去10数年に渡り市販製品が無い状態が続いてきました.IA/MS法の基本原理は下記の文献などで詳しく述べれています.   
      
    【解説論文】塩川善朗,中村恵,丸山はる美,平野芳樹,種田康之,井上雅子,
     「イオン付着質量分析法の開発とその応用」, J. Vac. Soc. Jpn., Vol.50(4), 234-240, 2007.   
    【総合論文】塩川善朗,中村恵,丸山はる美,平野芳樹,種田康之,井上雅子,藤井敏博
     「イオン付着質量分析法の開発と応用」,BUNSEKI KAGAKU, 53(6), 475-489, 2004.
    【解説論文】岩瀬啓一郎,中村恵,藤井敏博,
     「リチウムイオンの付加反応を利用した質量分析法」, J. Vac. Soc. Jpn., Vol.44(7), 655-660, 2001.

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    DIP-MSシステム

    DIP-MSシステムのここが良い

    ガス化成分と熱分解成分の分離

     ソフトイオン化(フラグメントレスイオン化)法の場合,GC分離無しに分子量で発生ガス成分を評価するため,ガス化成分と熱分解成分の分離性能は,分析装置の性能に直結しやすいパラメータの一つです.大気圧イオン化法の場合,熱抽出(分解)も大気圧下で行うために,高沸点化合物では熱分解温度とガス化温度が重なってしまいますが,DIP-MSシステムではこれらを良好に分離できます.一方で測定試料を減圧下に導入する必要があるため,気化しやすい成分は測定前にガス化してしまい測定できないという苦手分野も存在します.現在は試料セル作製法を工夫することで,DIP-MSによる検出としては沸点で150℃以上の有機化合物は基本的に測定対象にできるようになりました.150℃以下の有機化合物については,後述の"揮発性化合物の検出"のようにキャピラリインターフェースを用いた分析となります.

    定量分析も可能

     定性分析だけでなく,定量分析も行えます.

     検量線:DeBDE, フタル酸エステルなど


    測定条件(昇温プログラム)の設定がシンプル

     昇温プログラムは装置内の汚染を軽減する意味で,加熱上限温度を決めるくらいで,測定毎に最適な測定条件を模索する必要性は低くなっています.これは分離カラムを使用していないことと,減圧下で熱抽出することの効能の一つで,測定条件はガス化可能成分の熱抽出温度と高分子材料等の熱分解温度の切り分けができれば良く,この測定条件は目的に応じてほぼ一義的に設定できます.このため,基本的に1検体について1~2回測定すると試料性状の概要把握は十分にできます.

    ランニングコスト

     分離カラムが不要で,ガス消費量も少ないことから,ランニングコストは低くできます.以下,実運用での経験を踏まえてまとめています.
    ガスボンベ:
     DIP-MSシステムは真空下での熱抽出を行うのでキャリアガスを使用しないシステムもありますが,DIP-IA/MS装置の場合はイオン付着イオン化(IA)法の動作圧力が数10~100 Pa程度であり,三体ガスとして窒素ガスや乾燥空気を必要とします.年間のガス使用量は10リットルボンベ1本程度です.測定対象成分が決まっており,ガス中の不純物をそれほど気にしない場合には高純度ガスでなくても問題ない場合もあります.
    イオン源:
     使用環境にもよりますが,イオン付着イオン化(IA)法のイオン源でエミッタの再生(メーカー対応)が半年~1年に1回程度です.この他,装置の利用状況において,定期的なメンテナンスが必要ですが,これはユーザー対応が基本となるレベルの作業です.
    試料セル:
     試料セルは基本的には使い捨てとなります(樹脂サンプルの測定などでは,測定後に樹脂残渣が残ります).
    装置本体部メンテナンス:
     使用環境にもよりますが,半年~1年に1回程度で,イオン源から検出系のトランスファーレンズや装置内のクリーニング,DIPプローブ部のシール材などの消耗パーツの交換が必要になります.これはメーカーサポート対応の他,一部をユーザーメンテナンスで対応することも可能です.

    DIP-MSシステムで出来ないこと

    高極性化合物の検出

     イオン性化合物などの高極性化合物の多くはDIPでの昇温加熱では熱分解します.限られた化学種についてガス化できるとの報告もありますが,基本的には他のガス化導入手段が必要になると考えます.

    揮発性化合物の検出

     揮発性化合物は減圧下に試料を導入するためにガス化するために測定できません.揮発性化合物の分析にはキャピラリーインターフェースを用いて大気圧下のガスをイオン化領域に導入するなどの他の手法が必要になります. 市販GC-MS装置に接続するGC-IAユニットを製作することも可能ですが,現在のところ製品化は未定です.

     (分析実施例)
      ・キャピラリインターフェースにパイロライザーを接続して熱分解発生ガスを分析
      ・キャピラリインターフェースからテドラーバック中の採取ガスを分析 

    光学異性体・構造異性体など同一質量成分の分離検出

     DIP-MSシステムはカラム分離を行わないため,光学異性体・構造異性体などの同一質量成分の分離検出には対応できません.これらの分析にはキャピラリーインターフェースとガスクロマトグラフィーを用いて成分分離したガスをイオン化領域に導入するなどの他の手法が必要になります.

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